前谷明子
2013年3月から5月にかけての5日間、中国支部主催の「ファシリテーター研修」を受講致しました。
1月に受験した産業カウンセラー試験の合格通知を手にしたばかりのタイミングで、
「今年はちょっとゆっくりしよう」と思っていた矢先この研修があることを知り、
「その先に進みなさい」と言われたような気がして、思い切って受講を決めました。
受講初日はとても緊張していたのを覚えています。
それは、この数年無かったくらい勉強した後にようやく許された産業カウンセラーという資格を持って、
新しい一歩を踏み出したという実感があったからかもしれません。
そしてそこには、同じ道を行こうとする仲間たちと、
それを支援してくださる指導者の方々が待っていました。
研修では、はじめに座学の時間が設けられており、
昨年産業カウンセラー養成講座で学んだ「傾聴」の概念や基本的技法、
カウンセリングのプロセスについて改めて学び直すとともに、
グループ・ファシリテーターの役割について学びました。
座学の時間が終わると、あとは日程全てが「演習」とのみ記されていて、
そのボリュームに圧倒されたのを思い出します。
圧倒されるような思いはしましたが、始まってみると、
講義の時間も含めて、その日程はあっという間に過ぎたような気がします。
演習では、受講生が各々ファシリテーター役、カウンセラー役、クライエント役を行っていきます。
そしてその演習を指導者が観察する、という形です。
自分がファシリテーター役をするときには、
昨年の養成講座で、リーダー、サブリーダーがどんな風に自分たちに関わってくださったかを思い出そうとしたのですが、
ほとんど覚えていない自分に驚きました。
覚えているのは、カウンセラー役をうまくこなせず落ち込んだことと、
その時に受けた指導等に自分の目から鱗が落ちるような気づきを得たことだけです。
いま思えば、それは、それだけリーダー、サブリーダーが、指導者主導でなく、
受講者を主体としながら、そのグループの中で自己理解や他者理解が進むように配慮してくださったということでした。
この他にも、この研修で学んだ大切なことはたくさんありますが、
私個人にとって一番印象に残ったのは、グループ・アプローチを行う上で大切なことの一つである、
安心で安全な環境をつくりだすということです。
このことは、
例えば、自分の存在や発言を否定されない、秘密が守られる、発言の多寡にバランスが取れている、
参加者同士の感情的なぶつかり合いにならないといったことで、
つまりは、グループの中にいながら一人ひとりが尊重されるということだと思います。
それはまた、参加者にとって安心で安全な環境が保たれてはじめて、
参加者がその場に参加することに集中できるということだと思います。
参加者はその場に参加しながら、その内部では深い内省を行っています。
その内省の中から大きな気づきを得ることがあり、ファシリテーターはその場にいて、その参加者に寄り添うことが求められます。
研修の中でも、「ファシリテーターである前にカウンセラーであることを忘れないように」ということを指導者から繰り返し伝えられました。
エンカウンター・グループに参加し、安心・安全に基づく信頼を経験することで得られる気づきや成長は、
日常生活を送る上での力になっていくと思います。
今回のファシリテーター研修では、自身が、ファシリテーター役と同時に、参加者であることを経験することができました。
その中には、私自身の「準拠枠」から生じる苦い失敗も数々ありましたが、
指導者や仲間の力に支えられながらたくさんの気づきも得て、なんとか日程を終えました。
現在は、この時一緒に学んだ仲間とともにインターンとして今年の産業カウンセラー養成講座に参加しています。
そのような機会を与えていただいていることに感謝しつつ、
今後も、この研修で得た経験を重ね合わせながら関わらせていただきたいと思っています。